相続人全員が遺産の分け方について合意したら、その内容を書面に残す必要があります。 この書面が「遺産分割協議書」です。銀行の払い戻し・不動産の名義変更・相続税申告のすべてで必要となる重要書類です。 このページでは書き方のルールに加え、不動産・預貯金・株式の記載例(そのまま使える文例)、必要書類、作成の流れ、よくある不備を解説します。 下部の無料ツールでは、入力した内容から協議書の文面のたたき台をその場で自動生成できます。
遺産分割協議書とは、相続人全員が参加した遺産分割協議の結果——つまり「誰がどの財産を取得するか」——を 書面にまとめたものです。民法907条1項では、共同相続人は被相続人が遺言で禁止した場合を除き、 いつでも協議によって遺産の全部または一部を分割できると定められています。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
協議書の作成自体は法律上の義務ではありませんが、実務上はほぼ必ず必要になります。 公的な書式が決まっているわけではなく、任意の書式で作成できますが、有効な協議書にするためには 一定の要件(後述する記載事項・相続人全員の署名押印)を満たす必要があります。
なお、話し合いで合意に至らない場合や、そもそも協議ができない事情がある場合は、 各相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求(調停・審判)をすることができます(民法907条2項)。
遺産分割協議書には以下の事項を記載します。
遺産分割協議書は相続人全員の直筆署名と実印(印鑑登録した印鑑)が必要です。 認印では不可です。
さらに、各相続人の印鑑が実印であることを証明するため、 市区町村が発行する印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)を 協議書とセットで提出するのが一般的です。
「本人が本当に合意した」ことを証明するために実印が使われます。 相続人が遠方にいる場合は、郵便でページに割印を押す形で順番に回付する方法(持ち回り)が一般的です。 全員が一堂に集まる必要はありません。
不動産は登記記録(登記事項証明書)の記載通りに記載します。 土地の場合は「所在・地番・地目・地積」、建物の場合は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を そのまま転記します。
「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○ 残高全額」のように記載します。 「残高全額」と書けば、死亡後に利息が加算された分も含めて取得できます。
「○○証券会社(○○支店)に保管する被相続人名義の株式および有価証券のすべて」のように 証券会社単位でまとめて記載する方法が一般的です。
記載内容の比較
| 財産種別 | 必要な特定情報 |
|---|---|
| 土地 | 所在・地番・地目・地積 |
| 建物 | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積 |
| 預貯金 | 金融機関名・支店名・種別・口座番号 |
| 株式 | 証券会社名・支店名(銘柄まで書くのが望ましい) |
| 自動車 | 車種・登録番号・車台番号 |
以下は条項部分の文例です。実際の提出先(法務局・金融機関等)によって求める形式が異なる場合があるため、 提出前に必ず窓口で確認してください。
文例1:不動産(土地・建物)
1 相続人 山田 花子 は、次の不動産を取得する。 (土地) 所在 東京都〇〇区〇〇一丁目 地番 12番3 地目 宅地 地積 150.25平方メートル (建物) 所在 東京都〇〇区〇〇一丁目12番地3 家屋番号 12番3 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階60.12平方メートル 2階45.36平方メートル
文例2:預貯金
2 相続人 山田 一郎 は、次の預貯金を取得する。 〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号1234567 上記口座の被相続人死亡時点の残高全部及びこれに対する死亡日以降の利息
文例3:株式・有価証券
3 相続人 山田 二郎 は、次の財産を取得する。 〇〇証券株式会社 〇〇支店に開設された被相続人名義の口座に保管されている 株式、投資信託その他の有価証券の全部
文例4:協議書全体の型(末尾)
上記のとおり、相続人全員による遺産分割の協議が成立したので、本協議書を 相続人の数と同数作成し、各自1通を保有する。 令和6年6月1日 (相続人) 住所 氏名 印 住所 氏名 印
被相続人・相続人・財産の情報を入力すると、上記の文例をもとに協議書の文面(たたき台)をその場で生成します。 生成された文面はコピーして、Word等で体裁を整えたり、法務局・金融機関の求める形式に合わせて調整してご利用ください。 最終的な内容の確認は司法書士・弁護士・税理士にご相談することをおすすめします。
入力した内容はブラウザ内でのみ処理され、サーバーには送信されません。
被相続人
相続人(氏名を入力してください)
相続財産
協議が成立した日
※ このツールが生成する文面はたたき台です。法務局・金融機関・税務署など提出先によって求める記載内容が異なる場合があります。 相続人に未成年者・認知症の方がいる場合や、財産の内容が複雑な場合は、司法書士・弁護士・税理士にご相談ください。
協議書の作成には、相続人を確定させるための戸籍関係書類と、財産を特定するための書類が必要です。 主なものを一覧にまとめました。
必要書類の一覧
| 書類 | 入手先 | 用途 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 本籍地の市区町村役場 | 相続人の確定 |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村役場 | 本籍・住所の記載確認、不動産登記 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 相続人であることの証明 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 実印の証明。協議書に添付 |
| 不動産の登記事項証明書 | 法務局 | 土地・建物の記載事項の確認 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 不動産の評価額の確認、登記の添付書類 |
| 預貯金の残高証明書 | 各金融機関 | 預貯金の特定・相続税評価 |
| 証券会社の残高証明書 | 各証券会社 | 株式・投資信託の特定・評価 |
戸籍の収集は「法定相続情報証明制度」を使うと、一度収集した戸籍一式を法務局に提出し、 その後の各種手続きでは法務局発行の一覧図の写しだけで済ませられる場合があります。 相続人の数が多い場合や、複数の金融機関・法務局にまたがる手続きがある場合に便利です。
相続人の確定(戸籍調査)
被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法定相続人を確定させます。異父母兄弟・認知した子など、把握していない相続人が判明することもあります。
相続人全員での話し合い
誰がどの財産を取得するかを話し合います。全員が一堂に集まる必要はなく、電話・メール・持ち回りでの合意でも構いません。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立てを検討します。
協議書の作成
合意内容を文書化します。本ページのツールで文面のたたき台を作成するか、専門家に作成を依頼します。
相続人全員の署名・実印の押印
相続人全員が自筆で署名し、実印を押印します。あわせて各自の印鑑証明書を用意します。
各機関への提出
法務局(相続登記)・金融機関(預金の払い戻し)・証券会社(名義変更)・税務署(相続税申告)など、必要な提出先に協議書と印鑑証明書を提出します。
協議書を作成したあとに不動産登記や金融機関の窓口で受理されず、作り直しになるケースがあります。代表的な不備は次のとおりです。
財産の特定が曖昧
「自宅は長男が取得する」のような書き方では、どの不動産・どの口座を指すのか特定できません。不動産は地番・家屋番号まで、預金は支店名・口座番号まで記載します。
相続人の一部が欠けている
後から認知した子や、把握していなかった相続人が判明した場合、その人を除外した協議は無効となります。協議を始める前に戸籍調査で相続人を確定させることが重要です。
押印が認印になっている
法務局や金融機関の多くは実印での押印を求めます。認印で押印してしまうと、印鑑証明書との突合ができず受理されません。
日付・氏名の記載ミス
協議が成立した日付の記載漏れや、戸籍上の氏名と異なる表記(旧字体の相違など)があると、訂正を求められることがあります。戸籍の表記どおりに記載しましょう。
複数ページにわたる場合の割印漏れ
協議書が2ページ以上になる場合、ページのつながりを証明するため、相続人全員の実印による割印(見開きの綴じ目への押印)を求められることがあります。
遺産分割協議書がないと、以下の手続きができません。
なお、遺産分割の効力は民法909条により相続開始の時にさかのぼって生じます(第三者の権利を害する場合を除く)。 協議の成立が遅れても、財産は死亡した時点から各相続人に帰属していたものとして扱われます。
遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、状況によっては専門家への依頼が安心です。 おおよその目安は次のとおりです。
専門家への依頼費用の目安
| 専門家 | 主な業務 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 不動産登記申請・協議書作成 | 5〜15万円程度 |
| 行政書士 | 協議書作成(登記は不可) | 3〜10万円程度 |
| 弁護士 | 相続人間に争いがある場合 | 20万円〜(事案による) |
| 税理士 | 相続税申告とセット | 申告報酬に含む場合あり |
不動産の相続登記までまとめて依頼する場合は司法書士、 協議書のみ作成する場合は行政書士が費用対効果で選ばれることが多いです。 相続人間で意見が対立している場合は、弁護士でなければ代理交渉ができません(弁護士法72条)。 複数事務所に見積もりを依頼することをお勧めします。
本文をパソコンで作成し印刷したものに、相続人全員が自筆で署名して実印を押す方法が一般的です。協議書の本文全体を手書きにする義務はありません。ただし署名(氏名部分)は自筆が原則です。
相続人全員の合意がなければ協議は成立しません。話し合いで解決しない場合、各相続人は家庭裁判所に遺産分割の請求(調停・審判)をすることができます(民法907条2項)。感情的な対立が背景にある場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
法律で定められた統一の書式はなく、任意の形式で作成できます。この記事や無料ツールで示している文例も一例です。ただし、法務局・金融機関・税務署など提出先によって求める記載内容や添付書類の形式が異なることがあるため、実際に提出する前に窓口へ確認することをおすすめします。
相続人全員の合意があれば、内容を変更する新たな協議書を作成することは可能です。ただし、一部の相続人だけの意思で、すでに成立した協議を無効にすることはできません。財産の記載漏れが見つかった場合は、その財産についてのみ追加の協議書(財産の一部に関する遺産分割協議書)を作成する方法もあります。
未成年者は原則として法定代理人(親権者)が代理しますが、親自身も相続人である場合は利益が対立するため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。判断能力が十分でない方がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立て、その方に代わって協議に参加してもらう必要があります。
あります。同じ財産でも、法務局・金融機関・証券会社ごとに求める記載事項の粒度や添付書類が異なる場合があります。提出前に窓口へ必要な記載内容を確認するか、司法書士・行政書士にチェックしてもらうと手戻りを防げます。
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